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わかくさ便り
口腔機能低下症とは
口腔機能低下症とは、加齢や疾患などにより、食べる・話す・飲み込む・表情を作るといった口腔の様々な機能が徐々に低下している状態を指す病名です。日本老年歯科医学会によって提唱され、2018年に保険適用となった比較的新しい疾患懸念であり、主に高齢者に多くみられますが、若年層にもみられることがあります。
口腔機能の具体的な要素
人間の口腔機能は非常に多岐にわたり、以下のような機能が含まれます。
・咀嚼機能(噛む力)
・嚥下機能(飲み込む力)
・唾液分泌機能
・舌や唇の運動能力
・発音機能
・口唇閉鎖力(口を閉じる力)
これらのうち、複数の機能が同時に低下していると判断された場合、「口腔機能低下症」と診断されます。具体的には、7項目の評価基準のうち3項目以上に異常があると診断されることが多いです。
診断のための評価項目
日本老年歯科医学会が推奨する評価基準は以下の7つです。
1.口腔衛生状態の不良(口の中が清潔に保たれていない)
2.口腔乾燥(唾液の分泌量が減少して口が乾く)
3.咬合力の低下(噛む力が弱まっている)
4.舌口運動機能の低下(舌や唇の動きが鈍くなっている)
5.低舌圧(舌の押す力が弱まっている)
6.咀嚼機能の低下(食べ物をしっかり噛み砕けない)
7.嚥下機能の低下(うまく飲み込めない、むせる)
これらの検査は、専用の器具や簡易的な問診、検査によって行われます。
原因
口腔機能低下症の原因はさまざまですが、以下が主な要因とされています。
・加齢による生理的な変化:筋力低下や唾液の分泌減少など。
・慢性疾患の影響:糖尿病やパーキンソン病、脳梗塞後遺症など。
・生活習慣の影響:不十分な口腔ケア、偏った食生活、喫煙など。
・義歯の不適合:入れ歯が合わないことで噛む力が低下。
・精神的要因:会話機会の減少
症状と影響
口腔機能が低下すると、単に「噛みにくい」「むせる」などの不快感だけでなく、以下のような深刻な影響が出る可能性があります。
・低栄養:しっかり食べられず栄養不足に陥る。
・誤嚥性肺炎:食物や唾液が気道に入り肺炎を引き起こす。
・フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉減少):全身の体力や筋力の低下。
・認知機能低下:口腔機能の低下と認知症には相関があるとの研究もある。
予防と対策
早期発見と予防が非常に重要です。以下のような方法が推奨されます。
・定期的な歯科検診:口腔内の状態を定期的にチェック。
・口腔体操:唇や舌を動かす運動(パタカラ体操など)で機能維持。
・適切な食生活:よく噛む食材を取り入れる。栄養バランスを考慮。
・口腔清掃の徹底:歯みがき、舌掃除、義歯の管理など。
・嚥下訓練:飲み込む機能を高めるリハビリも効果的。
口腔機能低下症は、見過ごされがちな初期症状が多く、放置することで全身の健康に悪影響を及ぼします。しかし、早期に気づき、適切な対策を行うことで、機能の維持・回復が可能です。高齢社会において、QOL(生活の質)を保つためにも、口腔機能の重要性を理解し、積極的なケアを心がけることが大切です。